~電動機の種類と周波数~
電気で動く車両には、電車、電気機関車とも直流、交流の2種類があります。戦後、まず直流が普及しましたが、インバータ技術の発展により、交流式も導入されています。交流にはさらに50Hzと60Hzの2種類があります。
~電気機関車より先に電車が普及した~
現在活躍している車両を動力で分けると、電車、電気機関車、気動車、ディーゼル機関車となる。電車は、乗客を乗せパンタグラフから集電してモーターで自走する車両、電気機関車は、同じく電気でモーターを回し、動力がない客車や貨車などを牽引する車両です。
いっけん、蒸気機関車の役割が電気機関車に切り替わったように思えますが、実は電車のほうが普及が早かったという事実があります。初期の電気で動く車両は、1両でほかの車両を牽引するだけの出力がなかったのです。
電化されていない区間などで利用されるのが、内燃機関の力で動く車両である。燃料としてかつてはガソリンもイ使われましたが、引火しやすいため、安全性から現在はディーゼル(重油)がほとんどとなっています。貨物用などの機関車だけをいう場合はディーゼル機関車、自走し乗客も運ぶ車両は気動車と呼びます。
~直流と交流それぞれのメリット~
電気で動く車両には、貨車や客車を引っぱる電気機関車と、自走できる電車の2種類あることを説明しましたが、電車の種別はそれだけではありません。
電気には、電流と電圧が一定の直流と、電圧が波形を描いて規則的に変化する交流があることは、理科の授業などでおなじみですが、電気機関車や電車にも直流で動く車両と、交流で動く車両があるんです。
日本では、発電所から送られてくる電気は交流と決まっています。では鉄道でも、交流の電気機関車や電車が主流かというと、そんなことはないのです。
なぜなら、直流のほうが交流よりも、シンプルでコストの安い車両にできるというメリットがあるんです。
逆に交流のメリットは、発電所から流れる電力をムダなく使うことができ、変電所(発電所から送られてくる電気を、適切な電圧に下げるための施設)の数も少なくて済みます。つまり、変電所などの設備は交流のほうが低コストですが、車両設備は直流のほうが安く作れるというわけです。
というわけで、列車の本数が多い都市部では直流が多く使われ、本数がさほど多くないところでは交流がよく使われています。歴史的には、直流のほうが普及が早く、交流の普及は昭和30年代から本格化します。
~直流モーターとインバータの登場~
電気機関車、電車で長く用いられてきた直流モーターは、固定された磁界の中で磁極の反発力によってローターを回転させるものです。鉄道車両は大きく重いので、起動時には大きな力が必要になりますが、直流モーターは初動時から大出力が可能なので、鉄道に適していました。
ところが直流モーターには大きな構造的弱点がありました。それは、「ブラシ」と呼ばれる箇所を適宜メンテナンスしなければならなかったことです。
そんななか、直流を交流に変換する装置、すなわちインバータが、長い研究の末ようやく実用化されています。
その結果交流モーターは、直流モーターのようなメンテナンスに悩まされることもないため、急速に普及しつつあります。長距離特急用の車両としてよく用いられるのも、メンテナンスに手がかからないからです。
~電圧、周波数をまたぐ長距離列車~
さらに日本では、交流にも50Hzと60Hzの2種類があります。これは、明治時代に最初に水力発電が始まったとき、東日本はアメリカ製の、西日本はドイツ製の発電機を輸入して使用し、それぞれの1秒間の回転速度が違っていたためでした。
人々があまり地元から移動せず、蒸気機関車が主流だった時代はそれでもよかったのですが、戦後に長距離電車特急が普及しだすと、話がややこしくなってきました。
長距離を運行する特急列車には、運転区間によって、直流式(東京~伊豆急下田間の「踊り子」など)、交流式(↑専多~大分間の「ソニック」など)、直流車両に交流受電装置をつけた交直流式(大阪~金沢・富山間の「雷鳥」など)があります。さらに、それが東日本と西日本とをまたぐ列車であれば、50Hzと60Hzの両対応式となります。