~建築限界測定車~
「建築限界測定車」は、新線などで、線路わきの施設や建造物などが、建築限界(車両と接触しないように定められた一定の距離)を超えていないかどうかを調べる車両のことです。
~矢羽根からCCDカメラヘと進化~
1979年に旧式の三等車を改造して作られたスヤ31形(1953年にオヤ31と形式名変更)は、車体の外部に矢羽根をつけ、それが構造物に接触すると測定室に表示されるという単純な構造を用いており、その外見から「オイラン車」と呼ばれました。
この「オイラン車」は戦後長い間活躍しましたが、客車の老朽化や、測定時の手間がとてもかかったことから、JR東日本は1995年、最新ハイテクの建築限界測定車スヤ50形を導入しました。「同車は、検測器の窓から対象物にスリット光を照射して、4台のCCDカメラで撮影解析して距離を測り、さらに変位検出器などでデータ補正を行なうシステムを内蔵しています。この車両は2003年にはさらに改造されて重量クラスが上がった為、マヤ50と形式名が変更されました。
ちなみに、他社でも車両としてではなく備品として、同様のものが導入されています。
~歪んだ線路、すり減った線路はないか?~
同じく1990年代にハイテク車両に改造された検査車両に、軌道検査車のスヤ34形があります。
1959年に旧国鉄に導入された同車は、運行本数の増加によるレールの損傷に対応して登場しました。走行しながら、線路の軌間・水準・通り・高低・平面性・動揺を検査測定する車両で、自走用動力のない客車形式ながら、車載機器のためディーゼル発電機を内蔵、車内には冷房もありました。これが1992年に大幅改造されて登場したマヤ34形は、光学式と磁気式の検査装置を内蔵し、情報処理をデジタル化しています。
また、線路検査の車両としては、レールの粘着係数(車輪との摩擦の度合いのことで、これが低くなると、車輪がレール上をスリップしてしまう)を測定するクヤ497形がありました。こちらはパンタグラフから集電できる電車形式です。 1996年に引退しましたが、今も鉄道総合研究所に1両のみが存在しています。
~もう1台の黄色いドクター~
新幹線の検査車両として有名なのが、黄色い「ドクターイエロー」。しかし、ドクターイエローには、実は兄弟がいます。JR東海の名古屋区に在籍し、その名も「ドクター東海」と呼ばれています、1996年11月に登場した最新式の検査車両であるキヤ95形がそうです。
国鉄時代からの試験車に代わる総合試験車で、車体は最近の電車で主流のステンレス製、屋根上には測定用パンタグラフと観測ドームを設置、架線の磨耗をレーザー光線で測定することができます。
キヤ94の前後にキヤ95が2両という3両編成で運用され、それぞれが電力設備、信号・通信設備、軌道の検測を行なっています。この車両は内燃式の気動車で、電気のない路線でも自走できます。
~新幹線ディーゼル車、在来線新幹線?~
1958年に登場したディーゼル機関車DD13形は、500馬力エンジンを2台搭載し、操車場の入れ替え、貨物輸送などで活躍しましたが、国鉄民営化の1987年に姿を消しました。しかしこの車両、いまなお最新の新幹線路線で、保守用牽引車などの業務をつとめているんです。
新幹線の1435mm軌道用に改造された912形がそれで、ほかの事業車両同様、青地に黄の警戒色で塗装されています。同車はJR西日本の広島新幹線運転所と博多総合車両所に在籍しているみたいです。
在来線の試験用事業車ながら新幹線のような白い流線型の車両が、JR東日本が常磐線などで運用したクモヤE990、991です。在来線の究極に挑戦する、という意味で「TRY-Z」という通称が与えられ、運転席部分のみが上に飛び出した左右非対称のユニークな形状でしたが、残念ながら1999年には試験終了で廃車となりました。