~幻のマニ30形~
2003年、日本でたった6両しかなく、長らくマニアの間では知られながらも、公式には「存在しない」ことになっていた車両が姿を消しました。その名はマニ30形、日本銀行所有の現金輸送列車でした。
~公然の秘密?だった現金輸送車~
全長は21.1m、自重30.8t、積載過重は14t、濃いブルー一色の車体には窓がほとんどなく、内部には警備員添乗室の前後に荷物室を配置、最後尾に車掌室かあり、冷暖房も装備されていました。車体の屋根上には、警備の連絡用なのか無線用と、ラジオ用のアンテナが多数装備されているのが特徴です。
鉄道ファンのみが知り、こっそり観察される対象のまぼろしの車両でしたが、現在、保存された最後の1両が北海道の小樽市総合博物館で一般公開されています。
~消えた郵便専用車~
1986年、国鉄の郵便貨物輸送は全廃され、郵便貨物合造車も姿を消すことになりましたが、その最後の生き証人が、スユニ50形です。
1978年に登場したこの車両は、もとは救援車として使用されていた車両を改造したものです。車内は、前後に出入り台があり、前から、郵袋室、郵便区分室、便所と洗面所、荷物室、車掌室があり、郵便室と荷物室に各4tの貨物を積載することができました。
現在では、電気暖房と蒸気暖房を装備した2000番台がJR東日本に1両、蒸気暖房のみを装備した500番台がJR北海道に1両のみ存在し、救援車として最後の役割をはたしているといいます。
いっけん普通の電車形式ながら、郵便車である「ユ」の名を残す事業車では、身延線や房総半島の郵便、荷物用電車として使われていたクモユニ143形がありましたが、現在は表舞台から身をひいたみたいです。
~車両工場から直行する軽トラ風貨車?~
まるで軽トラックのように、前半分は通勤形電車のようですが、後半分のみ無蓋の荷台のようになった奇妙な車両、それが配給車クモル145、クル144形です。同車は工場から電車区へ部品を配給するのに使われていましたが、残念ながら現在では使用されていません。
車体全長は通勤電車の20mより少し短く17mですが、無蓋部分を中心に連結し、2両セットで運用されるのが通例でした。
ベースになった車両は、クモハ100、クモハ101、モハ101で、積載荷重は、車体前半の有蓋部分が2t、無蓋の部分が8tです。
~最強除雪車が改良を求められた点とは?~
除雪車には、雪を横にどけるラッセル式と、雪を吸い込んで横に吐き出すロータリー式があります。いずれも高出力で寒冷地に強いという特長を生かしているディーゼル機関車です。
ラッセル式の代表格は、DD13形をベース車にして1961年に登場したDD15形で、新潟県の長岡運転区をはじめ全国に12両ほどが存在します。さらにDE10形をベース車に、除雪ヘッド部分の着脱の簡略化などの改良を行なって1967年に登場したのがDE15形で、こちらは全国に約40両あります。
ともに運用地域によって、単線用、複線用、除雪ヘッドが車体の前面のみにある型、前後両面にある型、といったバリエーションが存在します。
ロータリー式の代表格は、1961年に登場したDD14形で、改良形も含め全国に約20両あります。さらに強力化をはかりDD51形をベース車にして1965年に登場したのがDD53形で、出力は最強のロータリー車であるが、のちに運転台の見晴らしが改良されました。理由は、沿線の宅地化により、排雪をちゃんと監視する必要が増したためだといいます。
JR北海道では、2000年からモーターカー式除雪車DBR600を導入、ロータリー式と、単線・複線の両方に対応したマルチプラウ式除雪ヘッドを併用したすぐれものです。
これらの業務用特殊車両たちも、地味ながら日本の鉄道を支えています。