~日本の鉄道時刻表は世界1~
時刻表には、北海道や九州などの地域別のもの、近鉄や京成などの会社別のもの、高速バスやフェリーなどの交通機関別のものなど、有料の冊子に限っても数十種類はあるでしょう。日本は世界一の鉄道旅客数を誇りますが、同時に世界一の鉄道時刻表大国なんですよ。
~鉄道の時刻表大国【日本】~
鉄道の旅に欠かせない時刻表。ところが、普通の人が鉄道の旅に時刻表を使うのは、事実上日本人だけだといいます。列車の時刻や乗り継ぎ、運賃や料金は、他の国の方にいわせれば駅や旅行会社で調べてもらうものだと。また、1日数本の路線なら案内はチラシ1枚で済むし、地下鉄や市電であれば、初電終電と運賃表と所要時間が、やはり1枚の掲示で済むだろうという話です。
日本全国津々浦々の書店や駅売店で、何種類もの全国版時刻表が販売され、それが月刊で毎月合計100万部以上も刷られています。これは、冷静に考えると驚異的なことです。雑誌や書籍でミリオンセラーといえば社会現象になるものですが、時刻表はそれをひそかに、そして軽々と成し遂げているのです。
~JR時刻表とJTB時刻表~
なかでも代表的なものは、交通新聞社発行の「JR時刻表」とJTBパブリッシング発行の「JTB時刻表」です。いずれもJR線をはじめ全国の鉄道・バス・航路・航空路などの時刻を収録する、B5判約1000ページ1150円の月刊誌で、時刻表といえば通常はこの両者を指します。
両者の内容に大きな違いはありません。JR特急の時刻が赤字か太字か、私鉄特急の時刻がJR特急の後にくるか会社線のページに混じるか、四国と九州のどちらが先に掲載されるか、長距離幹線の時刻についてどの駅でページを分けるか、その程度です。
どちらが使いやすいか?という問いに正解はありません。使い慣れた時刻表が一番使いやすい時刻表ですね。重度の時刻表ユーザーになると、いっぽうを使いこなすと、違うものでは戸惑うということです。
~知られざる時刻表たち~
時刻表は上記の2つだけではありません。「貨物時刻表」は、
社団法人鉄道貨物協会が年約1回発行する、JRの貨物列車の時刻表です。この時刻表のおもな読者は鉄道写真ファンで、時刻を調べて線路際にカメラを構え、貨物列車の写真を撮るのだといいます。
「道路時刻表」は、道路整備促進期成同盟会全国協議会が年1回発行する、高速道路や国道の距離や所要時間や料金を掲載する時刻表です。
「列車運転時刻表」は、JRや大手を中心とする各鉄道会社が制作する、列車の運転士のための時刻表です。この内容を列車別のカードに加工して、運転士はこれを確認しながら列車の定時運行を確保します。つまり業務資料なので絶対に市販はされないのが建前です。だがまれに、古書店で見かけることがあります。
~世界の鉄道時刻表を眺めてみる~
世界中の鉄道・バス・航路を掲載する時刻表として
有名なのが、イギリス・トーマスクックの時刻表(英語)です。現在は赤い表紙の欧州版「EUROPEAN」を毎月、青い表紙の海外版「OVERSEAS」を隔月で発行、欧州版には季刊で日本語版もあります。しかしおもな用途が業務用だからか、イギリスやほかの欧州諸国の書店でなかなか見かけず、むしろ日本国内での入手が容易です。
毎年発行されるドイツ鉄道の時刻表は、2002年度版で8分冊約6kgもある、世界最大の鉄道時刻表です。全線全駅全列車をひたすら掲載する遊びのない内容ですが、発行そのものが遊び心だといえるでしょう。駅の鉄道グッズ屋で販売され、鉄道ファンが購入するといいます。
アメリカの時刻表は、半世紀前には大都市の電話帳なみの厚さがありましたが、旅客輸送の衰退により、いまでは百数十ページの小冊子です。韓国や中国では中小判サイズの時刻表が毎月発行され、イギリスやイタリアやインドなどでも冊子時刻表が販売されます。
時刻表は、言語が異なっても数字や表形式がほぼ共通で、外国語が苦手でもある程度は読めます。しかし、漢字でもアルファベットでもない、韓国と中東地域のものは解読が難しいです。